どのような塾を選ぶか
○集団授業か、個別指導か。
学習塾には、集団授業の塾と、個別指導の塾があります。どちらを選ぼうか、と迷う方も多いかもしれません。どちらがいいかは、生徒の学力、志望校、性格など、いろいろな要素があって一概には言えません。
昔は、学習塾と言えば集団授業でした。上智スクールも、開設当時(40年前)は集団授業でした。先生が黒板の前で授業する、学校と同じスタイルです。個別指導のクラスもありましたが、個別指導を選ぶ生徒はごく少数でした。最近は、個別指導の塾が氾濫しています。直営で200教室以上ある個別指導塾もあれば、コンビニや、弁当店チエーンと同様に、フランチャイズ(FC)展開のチェーン塾もあります。どこの個別指導塾も、新学期や、夏期講習前には、競って新聞の折込チラシを入れ、とても目につくので、しだいに塾市場での個別指導のシェアが増えてきました。
費用の面を考えれば、集団授業の方がやはりエコノミーです。ただ、集団授業が効果を発揮するのは、一学年で複数のクラス分けができる場合になります。生徒の学力は、様々です。オール5の生徒もいれば、オール3の生徒もいます。これを一つのクラスで教えると、塾はどちらにとっても役に立たないことになってしまうでしょう。集団授業の場合は、最低でも3~4クラス(たとえば成績順に、A, B, C ,Dクラス)、が必要です。
集団授業で実際に教えてみるとわかりますが、先生がどんな熱弁をふるって教えても、熱心に聞く生徒がいる一方、そうでない生徒がいます。やはり、成績の良いAクラスの生徒は熱心に先生の授業を聞きます。そういう生徒は、学校でもそうだし、塾でもそうです。しかし、残念ながら、Bクラス~Dクラスは、どうしても塾の効果は劣ってしまいます。
一斉授業をするとよくあることですが、同じクラスの中でも、例えば数学の応用問題を教えると、「わかった」という生徒と「よくわからない」という生徒がでてきます。半分の生徒がわかっていないと、なんとか全員にわかってもらいたいと思って、もう一度同じ内容を繰り返して教えることがあります。
すると、しっかり聞いてもらいたい生徒が、ボーとしていて、もうわかっている生徒が熱心に聞いている、などという皮肉なことがとてもよくあります。
集団塾の場合、クラスの人数が多いので、一人あたりの授業料も比較的エコノミーですし、授業のコマ数も多くすることができます。コマ数が多ければ、それだけ生徒も“勉強している”ことになり、保護者の方にとっても“安心”になると思うのですが、しかし実際は、勉強時間が長くても、必ずしも学習効果が高い、とはなりません。学習効果でより重要なのは、勉強時間ではなく、どれだけ勉強に集中できるかです。
そもそも、一斉授業で効果が高いのは、自発的、積極的に勉強する子で、普段から授業を“聞く”力があって、授業の内容もよく“吸収”し、しっかり復習できる子です。そういう子は学校の成績も当然良い。ですから、塾で学校よりもレベルの高い授業を受ければ、間違いなく学力アップします。
しかし、ふつうの中学生の場合、そういう子は10人~20人中で1人、といったところでしょうか。
だいたいの子は、塾で学校と同じ一斉授業を受けても、先生は一生懸命に教え、時間はかけているのに、期待するほど成績が上がらない、というのが本当のところではないかと思います。授業を受ける“時間の量”よりも、生徒がどれだけ集中してくれるか、という“学習の質”が問題なのです。
集団塾を選ぶとすれば、各中学校のトップクラスの生徒が集まってくる都心の大手進学教室がいいのではないでしょうか。しかし、大手でも、首都圏のあちこち、タコ足的に100校も、200校も教室を展開している塾ではダメです。そういう塾は、目を引くチラシを頻繁に打ち、広告宣伝が上手で、生徒の総数は多いですが、一つ一つの教室の規模はそれほど大きくなく、いくつものクラス分けができません。
第一、一つの町で成績優秀な生徒ばかり集めることは不可能です。実際に通ってくるのは、近隣の中学校の生徒ばかりです。あちこちの駅前に教室を展開して、近隣の中学生を生徒募集のターゲットにしている塾は、もともとレベルの高い指導を想定していません。
ただし、集団塾でも、昔から塾を経営している個人塾の先生で、優れた“職人技”をもっている先生もいます。しかし、最近は、大手の集団塾の生徒獲得の攻勢に押されて、せっかくの良い塾でも、生徒数を減らしてしまっています。「悪貨が良貨を駆逐する」という状況があります。
経験的に言えば、だいたいの生徒(約80%)は「個別指導」の方が、指導効果が高いです。
たとえば数学の問題で、一斉授業の説明ではわからなくても、個別指導で、生徒の横で、ノートに書き込みながら、カンで含めるように教えてやると、すぐにわかる場合があります。
一斉授業では“上の空”の子でも、個別指導では、そうはさせません。
宿題も、しっかりやる生徒と、手を抜く生徒がいます。しっかりやる生徒はいいのですが、間違いだらけの生徒に、一つ一つ間違い直しをさせる、なんてことは事実上、不可能です。先生は一人ですから、限界があります。集団授業の場合、生徒に不十分があっても、「しょうがないなあ…、」と心の中で思いながら、クラス全体の授業は進めなければならないので、どうしても目をつぶることになります。
個別指導は、その点、生徒に隙を与えません。宿題のやり方にしても、生徒に不十分な点があれば、そのつど正してやることができます。先生が横にいて、目を光らせていれば、さすがに生徒は怠けられません。先生の立場からは、集団よりも、個別のほうが、生徒を指導しやすく、生徒の成績が上げやすい、というのが長年の指導での実感です。
では、個別塾の方が、どこでも集団塾よりいいかというと、そうではありません。個別でも、先生が未熟ではやはりうまくいきません。個別指導で、一番重要なポイントは、“先生の質”です。
個別塾、といえば、ふつうは“補習塾”です。補習ならば、多少学力のない大学生でも教えられます。個別指導では、たくさんのアルバイト講師を集めなければならないため、どうしても講師の質は良くありません。実際に教えているのは、ふつうの近所の大学生のお兄さん、お姉さん、といった感じの〝素人〟です。塾の講師ですから、学力が高ければまだいいのですが、都内のあちこちに100校も200校も教室を出している“大手”の個別指導塾や、フランチャイズ(FC)展開の個別指導塾は、経営上、アルバイトの時給はできるだけ低くしたいので、 実際にはかなり学力の低い大学生もアルバイトに採用しています。
どんな業種でも、規模が大きい(店舗数が多い)=安心、というイメージがあって、大手の塾はそういうイメージを広告でも狙っているのですが、こと“個別指導塾”に関しては、規模が大きく、生徒数が多ければ多いほど、個別指導塾の長所は薄れてしまいます。教室長(教室管理者)は、教室内で、どんな生徒を、どんな講師が、どんなふうに教えているか、ほとんどわからなくなってしまいます。
もちろん、中にはすばらしい講師もいますが、そういう講師に当たる確率は高くありません。当たったとしても、やはりアルバイトですから、途中で辞めてしまうことも多く、講師がくるくる代わってしまいます。
チェーン塾について
最近は、フランチャイズ(FC)展開のチェーン塾がとても多くなりました。フランチャイズといえば、昔からセブン・イレブンや、ローソンなど、コンビニがあります。その他に、持ち帰りの弁当店、すし店、クリーニング店、いろいろです。
「 塾もフランチャイズ店 」と聞くと、以外に思われる方も多いのではないでしょうか。
フランチャイズの利点は、商品の仕入れが一定しているということにあります。どの店でも、同じ品揃え、同じ品質の商品、同じサービスが期待されます。お客さんにとって、それが安心感につながります。
学習塾を開業するのに、資格はいりません。フランチャイズ本部と契約し、加盟金と開業資金さえ出せば誰でも塾経営者になれます。塾のノウハウを知らなくても、本部が教室のレイアウトから、チラシなどの宣伝広告まで、開業まですべて面倒を見てくれます。フランチャイズは経営者にとっては、何も知らなくても手っ取り早く開業できる、という利点がありますが、生徒・保護者の方には、特に利点があるとは思えません。
というのは、学習塾の商品は、結局は授業をする〝先生〟です。これは、コンビニのおにぎりや、お弁当と違います。そもそも、同じ品揃え、同じ品質、同じサービス、というわけにはいきません。個別指導では、一人の先生が教えられる生徒の数は限られています。したがって、大量の〝先生〟が必要です。ですから、一般の個別指導塾では、常にアルバイト講師の募集をしています。ほとんどがごく普通の大学生ですが、中には、就職が決まらないフリーターや、主婦など、さまざまです。
では、アルバイトをどうやって集めるか。
最近はほとんどインターネットの求人広告が利用されます。(インターネット専門の広告会社があります。) 大学生にとっても、インターネットで、「塾講師アルバイト」と検索すると、ずらりと、いくらでも求人を見つけることができます。
しかし、大学生の立場になると、同じアルバイトをするならば、少しでも時給が良いところの方がいいに決まっています。個別塾のアルバイト講師の時給は低く、コンビニや、マクドナルドや、ファミレスと、実質はほとんど変わりません。時給の高い塾は大学生の定着率も高く、時給の低い塾は敬遠され、すぐに辞めてしまいます。
個別指導塾で、〝授業料が安い〟のをキャッチフレーズにしているところは、アルバイト講師の時給も低く抑えているので、必然的に講師の質も低く、指導の質も低い、と言えます。しかし、その逆、〝授業料が高い〟からといって、講師の質が高く、指導の質も高い、とはなりませんので、注意が必要です。
個別指導塾といえば、補習塾、というのが一般的ですが、私たちの塾は、「補習」にも「進学」にも強い塾を目指しています。(個別指導塾では、めずらしい。)
ですから、普通の生徒はもちろん、どんな優秀な生徒にも教えられるよう、“先生の質”には特にこだわっています。塾には、普通のレベルの生徒がやはり多いですが、中には、抜群によくできる生徒もいます。私たちはそういう生徒も教えたいと考えています。
中学生の普通レベル、あるいはそれ以下の生徒ばかりであれば、学力の低い大学生でもなんとかなってしまいます。悪い言葉で言えば、“ごまかし”がききます。しかし、学力の高い生徒にはそうはいきません。ですから、私たちの塾では、どんな優秀な生徒が入ってきても教えられるよう、非常勤の時間講師でも、高校生の大学受験まで見れる、しっかりとした先生をそろえています。
集団塾か、個別塾か、となると、結局は‘費用’の問題になると思います。一人の先生が2人~3人しか教えない個別塾では、当然のことですが、時間あたりの授業料は高くなってしまいます。ただ、一口に個別指導塾といっても、その指導レベルは同じではありません。費用が高い=指導のレベルも高い、とはなりません。個別指導塾を選ぶ際の一番の目安は、どういう資格の、どういう先生が教えているかです。たいていの個別指導塾は、これは公開していません。私たちの塾では、どんな先生が教えているか、積極的に公開することにしています。
授業はすべてアルバイトの大学生まかせ、という個別指導塾が多いですが、上智スクールの一番の“売り”は、個別指導でも、プロ教師が教える時間比率が高い、ということです。私たちの塾では、週2回から指導をお引き受けしていますが、週2回のうち、少なくても週1回は必ずプロ教師の教室長の私や、副教室長、が授業を担当しています。非常勤の講師の役割は、あくまでもそれを補佐し、補完することです。
貴重な費用をかけるとすれば、ぜひ品質の良い塾を選んでいただけたらと思います。もし個別塾を選ばれるとすれば、他の個別指導塾より、(手前味噌になりますが、) 近隣では上智スクールが一番だと自負しています。
良い塾の見分け方として、その塾が開設後、何年たっているか、ということも大切な目安になります。私たちの塾は、今年で開設41年になり、すでに個別指導だけで1000人余りの卒業生が出ています。この間、近隣でも、開業後4~5年で消えてしまった塾が数多くありました。生徒を教え、成績を上げるということは、想像するほど易しくはありません。長く続いている塾は、どこも大変な努力をしてきて、地域の信頼を得てきています。最近、急速に教室数を増やしている個別指導のチェーン塾がありますが、塾の良し悪しが本当に分かるまでには、少なくとも数年は必要です。とくに、学習塾では、広告宣伝が派手で、チラシをまく回数が多いほど、それに反比例して、実際の中身はたいしたことはない、と考えたほうが当たっていると思います。